下級てき住みやかに

ホームレス同級生 “ごめんなさい” そして “ありがとう”

一週間の出張命令を受け、適当な理由付けをしては午前中に業務を切り上げる。

前日移動の、会社の粋な計らいに、笑みを浮かべながら単身で駅へと向かっていた。

平凡なサラリーマンの昼下がりを、少しばかり満喫してから新幹線へと乗り込むことにしよう。時間は十分にある。

 

ふと目に入った、スターバックスに立ち寄り、お気に入りの Grandeサイズで『ダーク モカ チップ クリーム フラペチーノ』を注文する。

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隣に移動しながら、レジで会計を済ませようとした時に、後方から店員に対して声がかけられた。

『お会計は、一緒でお願いします。』

状況が全く飲み込めずに、キョトンとしていると、後ろに並んでいた女性が、僕の注文したダークモカチップの代金を勝手に支払っていた。

社交辞令として、軽く会釈はしてみたものの、ご馳走してもらう理由が飲み込めない。

『飲め飲め詐欺』というものが、新たな流行の兆しとして見え始めているのだろうか…。

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 ホームレス同級生

彼女には見覚えがあった。名前は、とうの昔に忘れてしまっていたが、中学校の同級生だ。

そして、数年前に見かけた時の彼女は、紛れもなくホームレス状態であり浮浪者だった。

駅で、知り合いを見つける度に、『1000円を貸してくれ!』と嘆願してくる姿に、いつしか女子高生から『1000円おばさん』とあだ名を付けられ、揶揄されていたことを思い出す。

数年前の出張時に、僕は、彼女に1000円を貸して欲しいと言い寄られ、手渡した苦い経験がある。

苦い経験というのは、決して、1000円が惜しいのではなく、1000円の行く末が、彼女のためではなかったことにある。

浮浪者の恰好で、声を掛けられた際に、興味本意に注がれる周囲の冷たい視線に慌てふためき、その場を立ち去りたいがために、お金を手渡していたことを覚えている。

普通にスルーでもよかった。

お金を出さないと幾度も名前を呼ばれそうで、言い寄られそうで、単純に怖いと思ってしまった。

咄嗟に綺麗事で収めようとしつつも、本心では、逃げる権利を購入したのだと思っている。

後になって、差別してしまった、ちっぽけな自分に腹が立ち、居た堪れない気持ちに陥っていた。

咄嗟の行動が…あまりにゴミ過ぎて…。

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再会した彼女は、パリッとしたスーツに身を纏いながら、風貌は、有望なキャリアウーマンにしか見えなくなっていた。

スタバの代金を支払う際に、バックからさりげなく取り出した、幾何学模様の財布は、紛れもなくセレブ御用達の高級ブランドのゴヤール(GOYARD) だ。

 

 "ごめんなさい"そして "ありがとう"

スタバの店員から、ダークモカチップを受け取る。

何一つとして、状況がわからないまま、奥の空いている席にポツリと座った。

『ここ、座ってもいい?少しだけ、時間をもらってもいい…?』

コーヒーを手に持ちながら、彼女は、僕の目の前の席へと座る。そして、おもむろに、1000円札を財布から取り出して、僕の方にスライドさせながら、話し始めた。

遅くなってごめんなさい。
お借りしていた、お金を返さなければと思っていました。なんか、泥棒みたいだよね。

誰に声をかけても、そっぽを向かれる中で、お金を貸してくれたことに感謝しています。
お礼を言わなければと思っていました。
あの時は、ありがとうございました。

 

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忘れかけていた数年前の出来事。お礼を言われるたびに耳が痛い。心が痛い。

彼女は、純粋に謝罪を述べたかったらしい。

・別にいいんだよ..。気にしなくても…。
・当たり前のことをしただけだよ…。

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彼女が、勝手にそう解釈しているのであれば、社交辞令的にも、大人対応でも、それだけの言葉だけを返しても良かったのかも知れない。

大した額面でもない。単にいい人ですね。“うふふ” で終われる。

それでも、やっぱり、嫌な記憶として残っている。

謝らねば......。今後に置いて悔いが残る。

自分をリセットするための再会だと自負している。

謝罪したいのは、むしろ自分の方。

あの時、1000円を手渡したのは、声をかけられた事が恥ずかしくて、あの場所から、いち早く逃げたいと思ってしまったから。

差別をしていました。本当にすみません。

咄嗟に取った行動に、ずっと後悔していました。
逃げる手段として、お金を消費したと思っています。

 

少しばかり...沈黙が続いた。

 

『馬鹿正直なんだね。それじゃ出世しないよ。』

彼女は、クスクスと笑っていた。

どちらも受け取らないであろう 1000円で、キャラメルチーズケーキを追加注文した。

二人で食べてチャラにする。“Win−Win“ になろう。

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旦那といざこざがあって、逃げるようにして家を飛び出し、実家に戻れず街をさまようようになる。

雨露をしのいで、寝泊りできるところはあったらしいが、お金もなく、風呂も入らず、化粧も気にせず、そういう感じに染まっていったらしい。

結果的に、行政に保護され、実家へと戻り、家業の建材屋を継いで、“めでたしめでたし”

彼女が、淡々と説明してくれた限りで、根掘り葉掘りと聞くことではないが、収まるところに収まって良かったとは思う。

あの時は、ごめんなさい。そして、ありがとう。
出張頑張って下さい!

 

こちらこそ、ごめんなさい。そして、ありがとう。
いろいろあったと思うけど頑張って下さい!

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心の断捨離

多分、もう逢うこともない。

でも、逢わないからこそ大事にしたい事もある。

自分の取った行動が、心にずっと宿ってしまうような、嫌なことはたくさんある。

自分の頭の中で、ぐるぐると考えこんでしまうことが一番の天敵だと思うわけ。

自分の心の中で、ループを繰り返し、どんどんブルーに染まっていく。だから、人がどう思うより、自分が納得する方向に持っていくことにしている。直ぐに謝罪をしてるかも。(T ^ T) ごべん!

心の断捨離って必要だと思うんだよ。 

人は後悔を繰り返していく生き物だから。

心の中の『ごみを捨てる』って大事なことだと思うんだよ。楽に生きていたいから。

 

ちょっとわだかまっていたものが取れたような気がする。
同じ過ちを繰り返さないために、備忘録として書き残すことにした。

 

長期の出張で疲れたので...これにて寝ます。( ゚Д゚)

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