下級てき住みやかに

認知症 嘘に寄り添ってあげるということ

お盆中は、介護施設に入所している認知症の義理の母親を、自宅に帰郷させて自宅で介護をしていた。

相変わらず口も顔も悪いが元気でなにより。身体の衰えと共に歩けなくなった認知症患者。随分と面倒を見るのが楽になったものだ。

施設に入所させる前は、自宅で認知症の介護をしていた。真っ裸で、元気よく外を走り回っていた悪夢を思い起こす。

幾度も幾度も人間を辞めたくなった日のこと。

非情ではあるが、歩けなくなることが、認知症患者の目指すべき一つのゴールだとさえ思う。

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  • 認知症から身体が衰えていくパターン
  • 身体が衰えてから認知症になるパターン

同じようには見えるけど、前者と後者では辛さが全く異なってくる。前者を経験してきたけど何十倍辛いと思うんだ。元気印の認知症を見るということはね。

めげずに踏ん張ってきた自分を誇りに思う。だから自分で自分自身を、精一杯に褒めてあげる。自分を讃えることは潰れないための一種のおまじない。

『私は偉い』自分の心に語ってあげよう。

 

嘘に寄り添ってあげるということ

お盆が終わり、仕事が始まるため、義母を施設へと送り届けた。

帰り際に施設のロビーで、見ず知らずの婆さんにガッツリと手を掴まれる。

認知症は食べたことすら忘れるからブクブクと太る。70歳ぐらいだと思うが凄い腕力だ。

『たかちゃん。お父さんを迎えに行って!お父さんが駅で待っているから。』必死の形相で知らない婆さんが訴えてきた。

あんた誰?たかちゃんって…誰なのさ。ぶつぶつ。

心の中では、“あ〜めんどくさ” と思いつつも話を合わせてあげる。肯定して嘘に寄り添ってあげる。

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そもそも論で、否定しても判断が出来ないから。

僕の人生の数分間を、見ず知らずの婆さんの頭の中だけで繰り広げられるワールドに付き合おう。

スマホゲームで無駄に時間を潰すことも多いから数分間なんてくれてやっても別にいい。

残存している記憶を頼りに、頭の中で展開される本当の世界。過去に捕らわれてしまう病気なんだ。

 

介護スタッフが慌てて気付き、見ず知らずの人に申し訳ないと思ったのか止めに入ろうとしてくれた。

『大丈夫ですよ。少しだけ寄り添いますから。』 

認知症患者は短時間で世界を移動する。現在を認知する脳が萎縮して判断が出来ないから、過去の薄れいく記憶の中に彷徨ってしまう。

だから、数分後には別の世界へ移動する。直ぐに支離滅裂の行動に出てしまう。

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それまでの嘘にちょっとだけお付き合い。

昔は、慣れない介護に自分が壊れそうで、散々に毒を撒き散らしてきた。でも....。

『毒は吐くものじゃない。』

『毒は捨てるものだ。』

その方が楽に生きていられる。全てにおいてね..。

 

たまたま、動いて目に入った人を、“たかちゃん”と認識したのだろう。たかちゃんが何者でもいい。反論せずに頷いてあげる。

旦那を立てながら、純粋に家庭を守り、支えてきたことは会話でわかる。

嘘はついていない。嘘というのは判断が出来てこそつけるんだ。いろんな想いを抱いて人は生きている。

 

運悪く病気になってしまい、最後の最後まで迷惑かけてくる病気。『立つ鳥跡を濁す』本当にね。

でも、病気と人格を同じ土俵で結びつけて、その人の生き様の全てを否定したくない。

僕が身内の介護を続ける理由の一つだと思う。

 

見ず知らずの婆さんが、早く駅に行けと命令する。

『じゃぁ、お父さんを迎えに行くね。』

そう言うと、満面の笑みを浮かべながら、手を振って送り出してくれた。

小さな記憶を頼りに繰り広げられる、本人しか認識していない非公開のショートストーリー。ハッピーエンドで終わらせて上げることができたかなぁ。

数分後に、別のスイッチが入って暴れ出すかも知れない。そこまでの責任は持てないけどね。

 

病人に限らず、人と接する時は肯定から入ることが楽だと思う。何とかのセミナーじゃないけど。

『そうじゃない!』『違うだろ!』揉めるね…。

肯定しつつ、助言的に否定した方が楽に生きていけると思う。人と接する限りはストレスが募る。

少しでもストレスの貯金をしないようにしたい。

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ストレスを定期預金して一気に解約すると、もれなく壊れてしまうという特典がついてくるんだ。
変な利息はいらない…。だけど景気がいいみたい。

介護はストレスの塊だからね。
だから…少しでも楽に生きたいと願うんだよ。

 

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