下級てき住みやかに

世界一の『いいね』を 『生きたい』と綴った少年からもらった大切な出会いを語ろう【一期一会】

みなさんは、ホスピスという場所をご存知ですか
末期癌などの患者さんが尊厳死を受け入れ、精神苦痛と痛みを和らげながら余生を全うする緩和ケア病棟のことです。
そこで出逢えた一期一会の少年のお話になります。

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ホスピス(終末期ケア)緩和ケア病棟

ホスピスにいる多くの患者さんは入所から僅か3ヶ月程でこの世を旅立ちます。

緩和ケア病棟への入所を待つ患者さんは、非常に多く常に順番待ちの状態ですが、皮肉にも回転率の速さに特徴があります。 

 

緩和ケア病棟では、ささやかではありますが季節ごとのイベントが催されます。

ハロウィン、クリスマス、ひな祭り、端午の節句。

少しでも日常生活を感じ取れるように願いを込めて。

本当に患者の家族としては冥利に尽きます。

七夕の短冊に綴られた生きたいの文字

夏の風物詩である七夕のイベントの時に看護師さんから、「家族さんもどうぞ」と一枚の短冊をもらいました。

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何を書こうか悩みながら、テーブルの空いている席を探していると、酸素ボンベを引っさげながら、いつも明るく接してくれる10歳ぐらいの少年が先に座っていました。

彼は、短冊に迷うことなく願いを綴っています。

ただ、一言だけ


『生きたい』

力強く描かれたその文字には、味わったことのない重みを感じます。これだけ重い言葉を見たのは、後にも先にもありません。

力強くも、儚さが残る文字を見た瞬間に涙がとめどなく溢れだしました。

彼等は、緩和ケア病棟で尊厳死を受け入れ全うしようとしています。死は自然なことであり怖くはないと教わっています。
ここで笑うことはあっても泣いてはいけない。なんとなく、そう感じた私は逃げるようにその場を後にしました。

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一期一会

しばらくして、病棟へ戻ると少年の短冊が笹のてっぺんに括りつけてありました。
そして、少年は車椅子に腰掛けながら、満面の笑みを浮かべ、時より揺れる短冊を静かに眺めていました。
私は、看護師さんにもらった短冊に、「皆の願いが叶いますように」と綴り、笹の葉に括りつけました。

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しばらく、少年と一緒に笹の葉を見ていると、

「お兄ちゃん、イイね。」少年が語りかけてきます。
「ん、どうして?」私が彼に聞き返すと、

「お兄ちゃんは、明日も明後日もずっと続くんだよ。それって、すごくいいことなんだよ。」
彼は、私を見つめニッコリ笑っていました。

少年と交わした最期の言葉になります。

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あとがき

10年以上の月日が流れましたが、少年が私に言ってくれた「イイね」という言葉。

今でも私の心にずっと刺さっています。
少年があの時に、私に放った言葉は羨ましさとかの類ではなく、死を覚悟した少年が私に諭すように言った哲学的な言葉だと思っています。


生きている人の言葉は軽い。しかし死を受け入れ、覚悟した人の言葉は尊く重い。

彼との出会いは、私にとって人生のものさしとなる一つの基準を与えてくれました。

 

生きるということは辛いことのほうがむしろ多い。嫌なこと、泣きたいこと、逃げ出したいこと、無性にわめき出したいこと、年齢を重ねても負けそうになります。

そんな時に、ふと我に返り思いだすんです。彼が最後に諭してくれた「イイね」という言葉。
そして、彼に素直に謝ります。「また、挫けそうになったわ。ごめん。」

 

私のブログが気づけば、ちょうど、100記事を迎えていました。
弱小ブログではあるが、少年が生きた証をここに記しておきたい。